脂肪幹細胞治療

自家脂肪幹細胞治療には少量の脂肪を採取し培養する培養脂肪幹細胞治療と脂肪を大量に採取し抽出し注入する脂肪由来脂肪幹細胞治療の２種類があります。問題点として脂肪採取手術のためにその煩わしさと何回もできないこと、治療成績もPRPを著しく上回る効果がないこと、PRP治療の10倍も高価であることが上げられます。次に培養し爆発的に増殖させた幹細胞の染色体に異常が起こりがん化の危険性が生じます。現状では脂肪幹細胞について殆どがん化は問題ないと言っていますが、何十年経ってもがん化が完全に起こらないとは誰も未だ証明しておりません。このようなことから当グループでは現状脂肪幹細胞治療は導入をしておりません。

１）自家培養脂肪幹細胞治療
そけい部の小さな切開部から脂肪組織を数グラム採取し、細胞培養加工施設で６週間培養した脂肪幹細胞（液量4.5ml程度）を膝などの患部にヒアルロン酸注射のように注射する簡単な治療です。主に変形性関節症などの関節内に注入します。しかし、この治療費用は片膝100～120万、両膝120～150万にもなります。また最新の論文ではPRPを著しく上回る結果は出ておりません。順天堂大学羽田先生もPRP治療と脂肪幹細胞治療はほとんど結果に差がないと言っております。（第10回日本アンチエイジングセミナー2023.10.1）

2）自家脂肪由来幹細胞治療
脂肪組織由来幹細胞治療は脂肪組織を小皮切で皮下にチューブを入れて脂肪を250～300ml採取し採取脂肪をセリューションという機器を使って幹細胞細胞群を抽出しそれを関節内に注射する治療です。脂肪培養幹細胞治療に比べ脂肪幹細胞量は少ないですが、採取して３～４時間かかる治療です。大阪そばじまクリニックの成績（MB Orthopaedics 33,2020）ではKL分類II～IVの患者で12ヶ月後の成績はVASスコアで注射前46.5/100が32.8/100に、KOOSスコアで注射前48.7/70が58.6/70に改善が得られていますが、差はVASで14、KOOSで10で非常に僅かであり、当新鮮凍結PRPの方が成績がはるかに上回る結果です。2023年の当院の膝関節PRP注射前VASスコア47.4/100が注射後18.1/100に優位に改善しています。肩では注射前72.1/100が注射後23.7に、股関節では注射前56.4が注射後37.5と非常に効果がみられております。